新しい家に引っ越してから、目がチカチカする。家にいると頭が重いのに、外に出ると楽になる。こうした体調の変化は住まいの空気と関係していることがあります。
「シックハウス症候群」という言葉は広く知られるようになりましたが、実は原因は建材の化学物質だけではありません。この記事では、厚生労働省や自治体の資料をもとに、シックハウス症候群の症状と原因、国が示す化学物質の指針値、そして住まいでできる対策をまとめます。
※この記事は、室内環境に関する一般的な情報を紹介するものです。体調の変化が続く場合は、医療機関に相談してください。
結論:シックハウス症候群は「住まいの空気が原因の体調不良」の総称
- 症状は人によってさまざま:目がチカチカする、鼻水、のどの乾燥、頭痛、吐き気、湿疹など。その場所を離れると症状が軽くなることが多い
- 原因は化学物質だけではない:燃焼ガス、カビ・ダニ、換気不足、感受性の個人差などが重なって起きると考えられている
- 住まいでできる基本は換気:化学物質の濃度は換気量に反比例する。24時間換気を止めないことが第一

新しい家の化学物質のせい」と思われがちですが、実はもっと幅広い原因が関係しているんです。
シックハウス症候群とは
主な症状と特徴
自治体の資料では、シックハウス症候群の症状として、次のようなものが挙げられています。

- 目がチカチカする
- 鼻水
- のどの乾燥や痛み
- 頭痛、めまい
- 吐き気
- 湿疹など皮膚の症状
症状は人によってさまざまです。そして、その建物や部屋から離れると症状が軽くなることが多いのが特徴とされています。
実は『シックハウス症候群』という名称は基本的には日本でしか使用されておらず、世界的には「シックビル症候群」という呼び方が一般的。源流は欧米でビルを起点として問題になった「シックビル症候群」が日本では『シックハウス症候群』として知られるようになりました。

「シックハウス症候群」の方が住宅環境と健康をより身近に考えることができると思います。私はこの名称は非常に良いものだと思っています。
「便宜的な総称」であること
厚生労働省の検討会は、居住環境に由来すると推測されるさまざまな体調不良を「シックハウス症候群」と便宜的に総称しているとしています。そのうえで、多くの場合、指針値が定められた物質と体調不良との明確な対応関係は、現状の研究ではまだ証明されていないとも述べています。
つまり、シックハウス症候群は特定の病名というより、住まいの空気が関係していると考えられる体調不良をまとめた呼び方です。
原因は、化学物質だけではない

大阪府の資料では、シックハウス症候群を引き起こす要因として、次のようなものが挙げられています。
- 建材・家具・日用品から出る化学物質:接着剤や塗料、防虫剤、芳香剤など
- 暖房器具などからの燃焼ガス
- 住宅の設計や施工の方法
- 換気などの住まい方
- 化学物質に対する感受性の個人差
- 湿度環境、カビ、ダニなどによるアレルギー
これらが複雑に関係していると考えられています。新築の家だけの問題ではなく、古い家でも、カビやダニ、換気不足、暖房の使い方によって起こりうるということです。
国が示す化学物質の指針値
13物質とTVOC
厚生労働省は、室内の空気に含まれる化学物質について、ホルムアルデヒドやトルエンなど13物質の室内濃度指針値と、総揮発性有機化合物(TVOC)の暫定目標値を示しています。

| 物質 | 指針値 |
|---|---|
| ホルムアルデヒド | 100μg/m³(0.08ppm) |
| アセトアルデヒド | 48μg/m³(0.03ppm) |
| トルエン | 260μg/m³(0.07ppm) |
| キシレン | 200μg/m³(0.05ppm) |
| エチルベンゼン | 370μg/m³ |
| 総揮発性有機化合物(TVOC) | 400μg/m³(暫定目標値) |
ほかに、スチレン、パラジクロロベンゼン、テトラデカン、クロルピリホス、フェノブカルブ、ダイアジノン、フタル酸ジ-n-ブチル、フタル酸ジ-2-エチルヘキシルに指針値があり、合計13物質です。
指針値の意味
指針値は、現時点で得られている毒性の科学的な知見から、その濃度の空気を一生涯吸い続けても、健康への有害な影響は受けないであろうと判断された値です。厚生労働省は、この値までならよいという意味ではなく、指針値以下がより望ましいとしています。
なお、TVOCの暫定目標値は、国内の住宅の調査結果から合理的に達成できる範囲で決めた値で、毒性から決めたものではありません。完成後、住み始めてある程度時間がたった状態の目安とされています。
建築基準法による規制
2003年7月に施行された建築基準法の改正で、シックハウス対策として、ホルムアルデヒドを出す建材の使用面積の制限、クロルピリホスを添加した建材の使用禁止、そしてすべての建築物への機械換気設備(24時間換気)の設置が原則として義務づけられました。
換気が半分になると、濃度は2倍になる
化学物質がほぼ一定の量で出続けるとき、室内の濃度は換気量に反比例します。

| 換気回数 | 相対的な濃度 |
|---|---|
| 1回/h | 50 |
| 0.5回/h(法律の基準) | 100 |
| 0.25回/h | 200 |
| 0.1回/h(ほぼ止めた状態) | 500 |
(当サイトの試算。法律の基準の濃度を100とした場合)
24時間換気を止めたり、部屋を閉め切ったりすると、室内の化学物質の濃度は何倍にもなります。京都市の資料でも、部屋を閉め切って暖房すると汚染濃度が高まるので、寒い季節は注意するよう呼びかけています。

寒いからと24時間換気を止めて、窓も閉め切って……。冬はいちばん空気がこもりやすい季節なんですね。
住まいでできる対策

今の住まいでできること
- 24時間換気を止めない
- こまめに窓を開けて換気する:窓を開けるときは、反対側のドアも開けて空気の通り道をつくる
- 閉め切って暖房しない:特に開放型のストーブやファンヒーターは、燃焼ガスも出す
- 湿度を上げすぎず、カビやダニを防ぐ:湿度は40〜60%を目安に
- 新しい家具を入れたら、しばらく換気を多めにする
家具やカーテン、じゅうたん、ワックス、防虫剤、芳香剤、消臭剤、洗剤などの日用品にも、化学物質を出すものがあります。
新築・リフォームのとき
- 設計者や工務店とよく相談する
- 建材の等級を目安にする:合板などのホルムアルデヒドの放散量には、JIS・JAS共通の等級(F☆)があり、F☆☆☆☆がもっとも放散量の少ない等級
- 完成から入居まで余裕を持ち、そのあいだに換気する:新築やリフォーム直後は、室内の化学物質の濃度が高い状態にある
- 化学物質に敏感な人は、シロアリ防除剤などの薬剤を使わない施工法も相談する
相談できる窓口
住まいの空気についての相談は、お住まいの地域の保健所が窓口になっています。自治体によっては、聞き取りや簡易的な空気の測定に対応しているところもあります。体調の変化が続く場合は、医療機関に相談してください。

まずは換気から。それでも気になるときは、ひとりで悩まずに保健所や医療機関に相談してくださいね。
あなたの部屋の換気の状況を確かめる
部屋の広さや住まいの条件を入れると、換気の過不足の目安を計算できます。
部屋の広さと住まいの条件から、必要な空気清浄機の能力(CADR)・換気の過不足・冬の加湿量を計算します。2026年改正の新規格と旧規格、どちらの表示にも対応。所要時間は約1分。
- 1 部屋
- 2 気になること
- 3 換気と気候
空気清浄機を置く予定の部屋の広さを入力してください。
人数が多いほど二酸化炭素がたまりやすくなります。
広さは1〜100の範囲で入力してください。
あてはまるものをすべて選んでください(複数可)。
空気の目標値を厳しめに設定するかどうかの判断に使います。
壁や天井にある、常に回っている換気口のことです。2003年以降に建てられた住宅にはほぼ付いています。
必要な加湿量は、外の空気の冷たさで大きく変わります。
診断結果をもとに、条件に合う機種の絞り込み方と買う前の確認点を1通にまとめて送ります。
よくある質問
シックハウス症候群は新築の家だけで起こりますか?
いいえ。建材や家具の化学物質だけでなく、暖房器具の燃焼ガス、カビやダニ、換気不足なども関係すると考えられています。古い家でも起こりえます。
室内の化学物質の基準はありますか?
厚生労働省が、ホルムアルデヒドやトルエンなど13物質の室内濃度指針値と、総揮発性有機化合物(TVOC)の暫定目標値を示しています。ホルムアルデヒドの指針値は100μg/m³(0.08ppm)です。
空気清浄機で化学物質は取り除けますか?
空気清浄機の脱臭機能で減らせる成分もありますが、化学物質の濃度を下げる基本は換気です。換気を優先し、空気清浄機は補助として考えてください。
どこに相談すればいいですか?
住まいの空気についてはお住まいの地域の保健所、体調の変化については医療機関に相談してください。
まとめ
- シックハウス症候群は、住まいの空気が関係すると考えられる体調不良の総称
- 症状は人によってさまざまで、その場所を離れると軽くなることが多い
- 原因は化学物質だけでなく、燃焼ガス、カビ・ダニ、換気不足、個人差などが重なる
- 厚生労働省は13物質の室内濃度指針値とTVOCの暫定目標値を示している
- 化学物質の濃度は換気量に反比例する。24時間換気を止めないことが基本
- 住まいの相談は保健所、体調の変化は医療機関へ
出典
- 厚生労働省「シックハウス(室内空気汚染)問題に関する検討会 中間報告書その4」 https://www.mhlw.go.jp/houdou/2002/02/h0208-3.html
- 厚生労働省「室内空気中化学物質の測定マニュアル(統合版)」(2025年1月) https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/001376419.pdf
- 東京都保健医療局「ホルムアルデヒドなどの室内濃度の基準を知りたいのですが」 https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/kankyo/kankyo_eisei/jukankyo/indoor/id_faq/id_001
- 大阪府「シックハウス症候群について知りたい」 https://www.pref.osaka.lg.jp/faq/faq_000429.html
- 広島県「シックハウス症候群とは」 https://www.pref.hiroshima.lg.jp/site/householdsgood/sickhousetoha.html
- 北九州市「シックハウス症候群」 https://www.city.kitakyushu.lg.jp/ho-huku/file_0270.html
- 国土交通省「建築基準法に基づくシックハウス対策について」 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/jutakukentiku_house_tk_000043.html
※換気と濃度の関係は、化学物質の発生量が一定で、外気には含まれないと仮定した当サイトの試算です。実際の濃度は、温度や建材、経過年数などによって変わります。





